画家ランディとリヴォルノ沿岸 (2/23up)




       


画家ランディの案内で 冬のリヴォルノの沿岸を散策した。


地中海の中でもこの辺りの光の変化は 独特の美しさを誇っていることはイタリアでは良く知られている。

特に夕暮れ時、絶え間なく空と海の色が変化していく様は雄大でとてつもなく大きな舞台のさなかに
引き込まれてしまうようだ。



      


 
太陽は限りなく変化しながら永遠に動き続ける雲を映し出し、
さらに 眼下の海原に光をそそぎ、その反射光が
再び空からの光と戯れる。

そんな光と色がおりなす光景を 地元生まれのランディはうれしそうに、少し又自慢げに、時には真剣に眺め続ける。

決して飽きることのない光景とはこのようなことをいうのだろう。

息つく間もないほどドラマチックな光と影、大空と広がるたおやかな地中海、周囲を見回すとたくさんの
地元の人々がオーバーを着て仲良く肩を寄せ合ってベンチに座りながら 沈み行く太陽と大海原の舞台を
熱心に眺めている。



       


ランディは リグリア海岸からグロッセートにいたるまでのこの辺り一帯の夕暮れ時の光は他の地中海沿岸とは異なり、
独特の光線とそれにともなう 実に魅力あふれる
雲の移りかわりがあると説明してくれた。

不思議なことに、さらに南下してグロッセートまで行くと もうこのあたりの独特な現象である光線は見られないという。

もしかすると リヴォルノの地中海の向こう側には、大きなコルシカ島とその南にはサルデニャ島があるので、
それらの巨大な島が 西に沈み行く太陽が発する光線に
ドラマチックで絶え間ない変化もたらす要因となっているのかも
しれないと
ランディは説明してくれた。


リヴォルノ沿岸は 昔から多くの芸術家たちを惹きつけてきた。

特に 1855年頃から有名になった「マッキア派」 又は 「マッキアイオッリ」と呼ばれたグループに
属する画家たちは 大変この地を愛し、積極的にリヴォルノ沿岸の
四季を描いた。

マッキア派は フィレンツェとリヴォルノを中心に集まったイタリア人画家たちのグループで、アトリエから外へ出て、
屋外の自然光の中で自由に写生をすることにより
アカデミズムを捨てて、「真実の印象」(l’impressione dal vero
を絵筆で捉えようと提唱した。
彼らは1855年のパリ大博覧会において フランスのルソーやミレーで
おなじみのバルビゾン派や画家コローらの影響を受けていた。



       



ランディは 彼の夢はいつか地中海沿岸にそって延々と歩いたり自転車にのったりしながら、スペインやポルトガルまで
写生をしながら旅をすることだと語ってくれた。


さすがは「自分は最後のマッキア派の生き残りだ。」と、冗談めかしながらも
自負する彼だけある。
ランディの芸術にとって 地中海の光と大自然は不可欠な要素であり、又 彼が家族の次に最も愛しているものなのだ。 



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